受託開発プロジェクト成功のカギを握る「生成AI活用の目的」3選
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はじめに
こんにちは。DIVXの開発組織でマネージャーを務めている矢田です。今回の記事のテーマは、現在の世の中で非常に話題となっている生成AIについてです。
突然ですが、皆さんは生成AIを活用していますか?
生成AIとは、簡単に言うと、様々なコンテンツを生成できるAIのことです。有名なところだとChatGPTです。あまり触ってないなという人もいれば、中にはガチ勢がいて「もう日常的に使い倒してるよ!」とキレ散らかされることもあるかもしれませんが、まだまだ生成AIの活用方法に悩んでなかなか手を出せていない人が多いかもしれませんね。ぶっちゃけた話、生成AIが与える私たちへの影響は計り知れないところがあり、生成AIを日常的に活用している人と活用していない人では、見える世界が全く異なります。生成AIを活用していない人を例えるなら、新幹線を使わず、東京から大阪までランニングする人です。普通に心配になります。
DIVXでは、生成AIの活用は急速に進んでおり、社員の生成AI利用率はほぼ100%に達しています。生成AIの特性上、様々な業務プロセスにおいて役に立ちます。しかし、単に生成AIを使ってみるだけでは意味がありません。生成AIを何のために活用するのかという目的を明確に持つことで、生成AIをより効果的に活用することができるのです。
今回は、開発組織のマネージャーとしての視点から、「受託開発プロジェクト成功のカギを握る『生成AI活用の目的』3選」をお伝えしたいと思います。急にプロジェクトの話が出てきましたが、私自身プロジェクトマネージャーを兼任しており、プロジェクトの炎上がどれだけ大変なものが十分理解しています。炎上しているプロジェクトの関係者が日に日に疲弊していく感じ。できればプロジェクトは炎上させたくないですよね。生成AIは、上手く活用することで、プロジェクトの成功確率を高める秘密兵器となることは間違いないので、ぜひ今回の記事を最後まで読んでいただき、皆さんの生成AI活用レベルを上げ、世の中のプロジェクト成功確率を向上させましょう。それでは、「受託開発プロジェクト成功のカギを握る『生成AI活用の目的』3選」、始まります。
情報を鵜呑みにせず、自分で考えて決断しよう
「受託開発プロジェクト成功のカギを握る『生成AI活用の目的』3選」をお伝えする前に、大事な話をします。それは「情報を鵜呑みにせず、自分で考えて決断しよう」ということです。
こちらを説明するために、まずは分かりやすく今回のテーマのAIに沿ってみましょう。「情報を鵜呑みにする」については、生成AIから得られた情報を盲目的に受け入れ行動する人々。「AI信者」とでも呼べる人のことを「情報を鵜呑みにしている」と表現できます。生成AIをガンガン活用して、より良い価値を提供すること自体は素晴らしいことですが、AI信者になるは大問題です。
このままAIの場合の具体例を挙げてみましょう。開発の現場であり得るリアルな状況として、ChatGPTを使用してアプリ開発のエラーについて質問する際、エラーメッセージをそのままコピーして「どういう意味ですか?」「どうしたら解決できますか?」とAIに尋ね、得られた回答をそのままソースコードに適用し、再びエラーが発生すると再度同じ方法でAIに質問をする。得られた回答を適用して、またエラーに遭遇してAIに質問して、回答を得てエラーに遭遇して、と完全にタイムリープしてます。なぜこんなことが起きているのかというと、色んなケースが考えられますが、多くの場合、質問者が思考停止し、よく分からないままAIに謎の質問をして、AIが頑張って謎の質問に答えた結果、間違った情報が混ざり、その間違った情報をそのまま鵜呑みにして次のアクションを起こすからです。AIが嘘をつくなんて話もありますが、質問者が思考停止しているとAIの嘘を誘発する質問をしてしまうこともあります。AI信者はそんなことに全く気付かず、AIからの回答を鵜呑みにするので、間違った情報に気づかず、勝手にタイムリープ状態に陥ってしまうのです。勿論たまたまAIが正しい回答をして、上手く事が進むこともあるでしょう。しかしその回答の理解をせず、責任も持たず、物事を先に進めると自分自身が全く成長することができません。「なぜこうしたのですか?」と聞かれた時に「AIがそう言っていたから」とでも答えると、大切な信用を失うことになります。AI信者になるのはとても危険ですね。
と、ここまでAIの場合の話をしてきましたが、よくよく考えていただきたいです。これってAIだけの話でしょうか。AIを使わなければ同じ状況にならないでしょうか。そんなことはありません。先ほどAIが間違った情報を伝えてしまうという話がありましたが、人間でも間違った情報を伝えることはあります。AIが嘘をつくという話についても、人間が嘘をつくことは大いにあり得ます。そうなんです。私が伝えたいのは、「情報を鵜呑みにせず、自分で考えて決断しよう」ということ。AIだからどうこうという話ではなく、誰からのどんな情報であろうと、鵜呑みにするとタイムリープ状態になりますし、信用を失う危険性もあります。マネージャー目線で見て、本当に大切で心に刻んで欲しいことは、どんな情報を手にしたとしても、「最終的にはちゃんと自分の頭で考えて責任を持って決断することが重要」ということです。
これから「受託開発プロジェクト成功のカギを握る『生成AI活用の目的』3選」を紹介していきますが、「情報を鵜呑みにせず、自分で考えて決断する」ということを忘れないようにしてください。
受託開発プロジェクト成功のカギを握る「生成AI活用の目的」その1
「受託開発プロジェクト成功のカギを握る『生成AI活用の目的』その1」は「守備範囲の拡大 〜すべてお任せください〜」です。ChatGPTを使ったことがある人はご存知かと思いますが、自然言語生成を行う生成AIサービスでは、「これはなんですか?」「どうしてこうなっているんですか?」などを聞いてみると、ものすごく流暢に回答が返ってきます。試しに「冷麺の麺は何でできていますか?」と聞いてみると、「冷麺の麺は、主に小麦粉やそば粉、じゃがいもやさつまいものデンプンなどを使って作られます。特に韓国冷麺の場合、そば粉と小麦粉を混ぜたものや、デンプンを主成分としたものが一般的です。これにより、冷麺特有の弾力性と食感が生まれます。」と返ってきます。要するに、生成AIを上手く活用することで、さまざまな情報を素早く習得し、幅広い分野の知識を身につけることが可能となります。爆速でガンガン成長できるということですね。
DIVXでは、社員全員が「DIVX GAI」という専用ツールを利用することができ、自然言語生成を行う生成AIサービス使い放題の環境が整っています。そのため、DIVX社員は業務に必要な情報をいつでも手軽に習得でき、迅速なキャッチアップが可能となっています。
世間ではChatGPTの音声モードが普及しており、音声でAIと対話しながら調べ物ができる時代になりました。ChatGPTの音声モードも知識の守備範囲を広げるアクションを後押ししてくれます。ChatGPTの音声モードを使えば、文字を打つ必要がないので、よりスピーディーに手軽に調べ物ができます。スマホを取り出して、友達と会話する感覚で情報収集ができます。更には会話の練習をすることも可能であり、前提条件をしっかり伝えれば、クライアントとの交渉のシミュレーションもできたりします。
受託開発プロジェクトではさまざまな業界に携わる機会が多く、クライアントの課題を解決するために、特定の業界知識を迅速にキャッチアップする必要があります。また、エンジニアに必要な知識は膨大であり、且つ変化が激しいので、常に学び続けることが求められます。そのため、生成AIを使うからには、自身の能力開発をブーストさせるようにした方が良いです。業界のことを知りたいと思うなら、業界の最新トレンドや競合他社の動向などを調べてみるのです。その業界のクライアントと会話するためには業界用語を知っておかないと会話できないので、真っ先に業界用語を調べてみても良いですね。生成AIをうまく活用し、知識の守備範囲を拡大させることで、プロジェクト内で高いパフォーマンスを発揮し、クライアントにも大きく貢献する。そんな目的を掲げて生成AIを活用してみてはいかがでしょうか。
受託開発プロジェクト成功のカギを握る「生成AI活用の目的」その2
「受託開発プロジェクト成功のカギを握る『生成AI活用の目的』その2」は「業務の効率化 〜早いは正義〜」です。冒頭でもお伝えしましたが、生成AIが普及している現代において、生成AIを活用しないまま従来通りの業務を続けていると、生成AIを駆使する人々に置いてかれます。物理的にです。生成AIを全く利用していない人をAさん、生成AIを駆使している人をBさんとして同時に業務を開始した時、Aさんが出勤したら、Bさんは退勤してます。
生成AIが業務効率化に役立つことは皆さんご存知だと思います。スライド作成や議事録作成、プログラミング、メール作成といったさまざまな業務を効率化することが可能です。特に数式やコードには強く、例えば、「Googleスプレッドシートにおいて、A1からA10のセルの「◯」の個数を示す数式を教えてください」と質問すると「=COUNTIF(A1:A10, "◯")」と一瞬で正解を出してくれます。今までは、要件を満たすために必要な関数を探して、関数を使って数式を組んでみて、という時間が必要だったのですが、その時間が皆無となったわけです。
すでに世の中に出回っているChatGPTなどの生成AIツールや、独自に実装やチューニングしたRAGを活用すれば、業務効率を劇的に向上させることができます。ちなみにRAGというのは、Retrieval-Augmented Generation(検索拡張生成)の略であり、大規模言語モデル(LLM)によるテキスト生成に、外部情報の検索を組み合わせることで、回答精度を向上させる技術のことです。外部情報の検索を組み合わせることで、大規模言語モデル(LLM)の出力結果を簡単に最新の情報に更新できるようになる効果や、出力結果の根拠が明確になり、事実に基づかない情報を生成する現象(ハルシネーション)を抑制する効果などが期待されています。「情報を鵜呑みにせず、自分で考えて決断しよう」の章で話した、AIが嘘をつくことについて、RAGを用いることでAIの嘘を抑制することができるというわけです。
業務効率化の話に戻します。業務効率化とは、業務の質を低下させて早く終わらせることでは決してありません。業務の品質を維持しつつ、時間を短縮することです。当たり前かもしれませんが、決して忘れてはいけない、非常に重要なことです。そして、業務を効率化して生み出した時間はどうすれば良いのかというと、どのようにすればクライアントにさらに良い価値を提供できるかを深く考える時間にすれば良いのです。クライアントに対して真摯に向き合うこの時間こそが、プロジェクトを成功に導くアクションを起こすキッカケとなり得るのだと私は思います。ぜひ生成AIを使ってどんどん業務の効率化を行なってください。
受託開発プロジェクト成功のカギを握る「生成AI活用の目的」その3
「受託開発プロジェクト成功のカギを握る『生成AI活用の目的』その3」は「客観性のある業務品質の提供 〜生成AIはパートナー〜」です。大前提、プロジェクトは決して一人で進めるものではなく、クライアントやユーザー、チームメンバー、上司など、さまざまなステークホルダーが存在します。関係者と「あれが良い、これが良い」と議論して結論を出してプロジェクトを前に進めていく。自分だけが良いと思っていても、他の関係者が納得しない場合、ただの自己満足になってしまい、プロジェクトは前に進みません。個人の判断基準が必ずしも最適解を導くわけではない状況。プロジェクトを前に進めるためには「客観性」が非常に重要となるのです。「この手法が妥当なのか」「他にもっと良い方法がないのか」「見落としている部分がないか」これらを客観的に評価して、他の関係者が見ても納得感のある答えが必要となります。でも、客観性ってかなり難しいです。「人の気持ちを考えよう」と意気込んで自分だけで悩んでいてもかなり難易度が高いです。メンターのような人が常に付き添ってくれることもあまりないでしょう。そもそも、立場や環境が異なる人が入り混じっているので、難しいのは当然です。
しかし、ここで活躍するのが生成AIです。クライアントの視点でこの方法に懸念がないかと問いかけることで、クライアントの視点からの回答を得ることができます。別の方法について提案を求めれば、複数の候補を提示してくれます。生成AIに前提条件をしっかり伝えれば、その前提条件を元にアドバイスしてくれます。
ここで具体例を話します。システム開発の見積りの場面を想定してみましょう。発注者側の予算が1000万円だったとします。2000万円の見積書が出来上がりました。2000万円の見積書を添付して、「見積りが完了したので確認お願いします」とだけ連絡をする。するとどうなるでしょうか。当然予算に合わないので発注されずに終了します。逆に生成AIに前提条件を伝えていたらどうなっていたでしょうか。「システム開発の見積りを進めています。発注者の予算は1000万円であり、見積りの結果2000万円になりました。この状況で前向きに発注を検討していただくためには、どういうアクションが適切か教えてください」と質問してみます。「要件の見直し・フェーズ分け・コスト削減の提案・支払い条件の調整・付加価値の明確化・追加提案を用意」など色んなアクションの候補が回答として返ってきます。ただ単にそのまま見積り結果だけを伝えるのではなく、生成AIから返ってきた回答を元に、最適なアクションを取ることで、発注される可能性がグッと上がるのです。
このように、生成AIを上手く活用すれば、網羅的な検討が可能となり、自信を持ってアイデアを提案したり、行動を起こすことができます。自分だけで閉じこもって考えたアイデアや行動ではなく、生成AIと共に導き出した客観的なアイデアや行動です。もちろんAI信者になるのではなく、最終的には自分の知識や熱量を元に判断をする必要がありますが、自分一人だけで考えてはいない客観性のある価値を提供できます。
これはもう、生成AIをパートナーとして考えた方が良いですね。生成AIをただのツールとして捉えるのではなく、業務を一緒に行うパートナーとして考えることで、業務の品質向上に寄与できる。プロジェクト成功のためにも、生成AIをパートナーとして活用してみてはいかがでしょうか。
クライアントファーストが大事
ここまで「受託開発プロジェクト成功のカギを握る『生成AI活用の目的』3選」をお話ししましたが、最も重要なのは、クライアントにより良い価値を提供するために生成AIを活用すること、つまり「クライアントファースト」の精神です。クライアントファーストとは、クライアントにとっての価値を第一に考えるということです。
冒頭で「情報を鵜呑みにせず、自分で考えて決断しよう」と伝えましたが、その逆、自分で考えず決断もせずに情報を鵜呑みにしていると、クライアントが真に求めていることに気づくことができず、本当にやるべきことを成し遂げることはできません。
AIを用いた場合の具体例を挙げてみましょう。自分で考えず決断もしない人が生成AIを用いてWebアプリケーションの要件定義を行うとします。生成AIを使って一般的に必要な機能を洗い出し、そのまま提示した場合、それでクライアントは満足するでしょうか。おそらくクライアントは不満を抱くでしょう。そもそもそのWebアプリケーションを開発するに至った背景はなんでしょうか。予算感はどうでしょうか。クライアント側の前提条件や思いを一度でも自分の頭で考えてみると、追加で必要な機能や不要な機能が見えてきます。「受託開発プロジェクト成功のカギを握る『生成AI活用の目的』その3」の章でも話しましたが、生成AIに前提条件を伝えれば、その状況に適した回答を返してくれます。自分自身の頭でちゃんと考えさえすれば、クライアントが満足するアクションを行うことができるのです。
改めてにはなりますが、受託開発プロジェクトを成功させるために、「クライアントファースト」という考え方は非常に重要です。情報を鵜呑みにせず、自分で考えて決断する。これこそが「クライアントファースト」に繋がることを忘れないでください。
おわりに
今回は「受託開発プロジェクト成功のカギを握る『生成AI活用の目的』3選」をお伝えしました。
1つ目は「守備範囲の拡大」
2つ目は「業務の効率化」
3つ目は「客観性のある業務品質の提供」
そして最後に、クライアントファーストが大事という話もしました。
生成AIは見える世界をガラッと変える力があり非常に魅力的です。生成AIを最大限に活かし、常にクライアントファーストで行動することで、受託開発プロジェクトでの成功率を飛躍的に向上させることができるでしょう。受託開発プロジェクトに携わる人も携わらない人も、皆さんが目的を見失わずに生成AIを活用して、より良い生成AI体験をしていただけると幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。RAG開発やシステム開発、セキュリティ診断等、少しでも困りごとがあれば、クライアント毎の課題解決に向けてご支援させていただきますので、お気軽にご相談ください。
お悩みご相談ください
参考文献
https://www.nri.com/jp/knowledge/glossary/lst/sa/generative_ai