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社内AIチャットツールの利用率を上げるために取り組んだ3つのステップ


目次[非表示]

  1. 1.はじめに
  2. 2.内製化の背景と課題
  3. 3.①現状把握と課題の特定
    1. 3.1.利用状況の可視化
  4. 4.②ツールの機能改善と環境整備
    1. 4.1.競争相手はChatGPT
    2. 4.2.独自機能の開発背景
  5. 5.③活用促進と持続可能なサポート
    1. 5.1.デモイベントの開催
    2. 5.2.継続的なサポート体制の構築
  6. 6.まとめ

はじめに

こんにちは。株式会社DIVX主任の小柳津です。
私たちDIVXでは、社内向けに「DIVX GAI」という生成AIのチャットボットサービスを展開しています。このツールが登場する以前は、ChatGPTを活用して社員のAI利用率はほぼ100%という非常に高い水準を達成していました。しかし、内製ツールを開発するとなると、「利用率を下げない」という大きなプレッシャーがありました。

「DIVX GAI」を開発する背景には、ChatGPT以上に社員の業務にフィットした機能を提供する必要があるという使命感がありました。そのため、社員のニーズを丁寧にヒアリングし、業務フローに自然と溶け込むようなツール設計を徹底しました。このような取り組みにより、現在も社員のほぼ全員が日常業務でこのツールを活用しており、利用率は非常に高い水準を維持しています。

本記事では、社内AIツールの利用率を高め、維持するために実施した3つの具体的なステップについて詳しくご紹介します。これらの取り組みは、ツール導入の成功要因を明確にするだけでなく、他社での応用可能性も示唆する内容となっています。同じような課題に取り組んでいる方々にとって、少しでも参考になれば幸いです。

また、この記事では、CTOの田島の記事で示されている「高い利用率という結果」に至るまでのプロセスを掘り下げ、その背景にある試行錯誤や具体的な施策を共有します。それでは、私たちが取り組んだ3つのステップをご紹介します。

内製化の背景と課題

私たちDIVXでは、当初ChatGPTを活用し、社員のAI利用率を100%近くまで高めることに成功していました。しかし、さらなる利便性や社内ニーズに応じた機能を実現するため、独自のAIチャットツール「DIVX GAI」の内製化に挑戦しました。内製化を通じて、利用者一人ひとりの声を反映し、業務効率化に貢献するAIツールを目指しています。

この取り組みには、AIツールの研究を深めると同時に、技術的・利用者目線の両面で、自分たちが使うツールを自分たちで作ることで解像度を高めたいという狙いがありました。
単なるコスト削減だけが目的ではなく、私たちが特に注力したのは、以下の点です:
・どうすれば社員にAIを積極的に使ってもらえるのか?
・利用者が本当に求める機能は何か?
内製化のプロジェクトには「ChatGPTよりも利用率が下がってしまうのではないか」という懸念が伴っていました。そのため、私たちはこの課題を克服するために、徹底的な研究と開発を進めました。その結果、以下のようなアプローチでツールの進化を実現しました。

  • 現状把握と課題の特定
    • 利用データの不足を解決するため、利用率を分析できるCSVデータダウンロード機能を作成し、さらにアンケートを活用して社員の声を正確に分析・可視化する基盤を構築しました。
  • ツールの機能改善と環境整備
    • 社員が実務でAIを活用しやすい環境を整えるとともに、「テックブログ執筆支援」など業務に直結した機能を追加し、AI活用をスムーズに業務フローへ組み込みました。
  • 活用促進と持続可能なサポート
    • デモイベントや使い方説明セミナーを通じてAI利用を促進し、さらに運用データを活用してAIモデルを継続的に改善することで、利用の持続性を確保しました。

①現状把握と課題の特定

利用状況の可視化

まずは現状を正確に把握するため、APIログを活用して社員ごとの利用頻度や利用目的を可視化しました。当初は必要なデータが不足しており、どの機能を導入すべきか、意思決定が難しい状況でした。そこで、利用データをCSV形式で収集・整理できる仕組みを構築しました。これにより、部署や個人ごとのツール活用状況や具体的な傾向を明らかにし、データに基づいた意思決定が可能になりました。

分析の結果、以下のような課題が浮き彫りになりました。

  • 一部の社員は積極的にツールを活用している一方で、全く使用していない社員も多い。

さらに、社内アンケートや直接ヒアリングを通じて、以下のようなフィードバックを得ました。

  • 「業務に直結した機能が不足している」
  • 「UIが直感的でなく使いにくい」
  • 「ChatGPTにはある便利な機能が社内ツールにはない」

これらのデータと意見をもとに、ツール導入初期のサポート不足や業務に適した機能の欠如が利用を妨げる主要な要因であることが判明しました。その後、社員が必要とするデータを的確に把握し、それに応じた機能導入を進める体制を整えました。このプロセスにより、利用促進に向けた明確な方向性を示すことができました。

②ツールの機能改善と環境整備

競争相手はChatGPT

私たちが目指したのは、ChatGPTを超える社内専用ツールの構築です。そのために、以下の施策を中心に進めてきました。

  • 社員の要望を反映した機能追加
    • 社員から寄せられた「業務にもっと直結した機能が欲しい」という声をもとに、必要な機能を迅速に開発・追加しました。
  • 業務フローへの自然な統合
    • ツールを日常業務の一部として取り込むことで、特別な意識をしなくても社員が自然と使うような仕組みを整えました。
  • メッセージ送信コマンドの柔軟な設定
    • ユーザーから「ChatGPTの使い方に慣れているため、異なる送信方法に戸惑う」といった意見を受け、メッセージ送信のコマンドを個人で設定できる機能を追加しました。
      • Command+Enterで送信(改行:Enter)
      • Enterで送信(改行:Shift+Enter)
      • Shift+Enterで送信(改行:Enter)
    • この柔軟な設定により、従来のChatGPTユーザーも、独自の使い勝手を求める社員も満足できる環境を提供しています。個人設定機能はChatGPTにはないため、差別化ポイントとしても大きな価値を持っています。
  • お気に入り機能の導入
    • GAIでは、今までやり取りしていたチャットの履歴を「お気に入り」に登録する機能を提供しています。この機能は、本家ChatGPTにはない独自の強みです。ChatGPTではスレッドが増えると、どのスレッドに何が記録されているのかを目視で探さなければならず、目的の履歴を見つけるのに時間がかかることがあります。一方、GAIではお気に入り機能を活用することで、重要なスレッドにすぐにアクセスできる環境を整えました。例えば、過去に行った特定のプロジェクトのやり取りや業務上重要な会話を「お気に入り」に登録しておけば、必要なときに簡単に履歴を確認できます。この機能は特に、頻繁にチャットを利用する社員にとって大変好評で、スレッド管理の効率化や業務スピードの向上に貢献しています。
  • スレッド一括削除機能で効率的な整理を実現
    • GAIでは、過去のやり取りの中で不要となったスレッドを一括で削除できる機能を提供しています。ChatGPTではスレッドの削除が個別対応のみのため、一つずつ削除を選択する手間が発生します。しかし、GAIではチェックボックスを使用して複数のスレッドを選択し、一度の操作でまとめて削除できるため、スレッド整理がスムーズに行えます。この機能により、スレッドが増えすぎて管理が煩雑になる状況を防ぎ、不要な情報を削除して作業しやすい環境を維持することができます。特に大量のスレッドを管理する必要があるユーザーにとって、この一括削除機能は作業効率を大きく向上させる要素となっています。

独自機能の開発背景

私たちの社内では継続的にテックブログを公開しており、記事の作成と公開フローを支える仕組みが重要となっています。しかし、レビューや校正の負担が大きく、記事作成の品質を保ちながらリリースのペースを維持することが課題となっていました。

そこで私たちは、RAG技術を活用した校閲AIを開発し、レビュー工程の一部をAIに委ねることにしました。このAIは、誤字脱字の修正やテキスト内容のチェックだけでなく、技術的なポイントや論理の整合性も確認できるため、レビュー作業の効率化と精度向上に貢献しています。

その結果、レビューにかかる負担が大幅に軽減され、現在もリリーススケジュールを遅らせることなくブログを公開し続けることができています。実際に校閲AIがなければ、テックブログの運営が難しいほど深く業務に組み込まれています。ツールの利用が「特別な作業」ではなく「日常の一部」になったことで、社員の利用率を維持する大きな要因となっています。

また、校閲AIの導入だけでなく、その機能や精度の向上にも真剣に取り組みました。校閲AIの機能が問題ないか継続的に監視し、必要に応じてレビューを重ねることでAI自体の精度を向上させるプロセスを確立しました。運営チーム自らが校閲AIの機能レビューを行うことで、改善点を迅速に反映させています。

さらに、テックブログの運営権限を自分たちで持つことにより、校閲AIを自社のニーズに合わせて成長させ、ツール全体の価値を高めることができました。これにより、社員が校閲AIを信頼して利用し続けられる環境を整え、ツールの進化と運用効率化を同時に実現しました。

③活用促進と持続可能なサポート

デモイベントの開催


利用促進の鍵となったのは、社員がAIツールを身近に感じられるデモイベントの開催です。

  • 業務に即したデモ:具体的な業務シナリオに基づき、実際の活用方法をリアルタイムで示すことで、ツールの有用性を実感してもらいました。

  • 双方向のフィードバック:デモ後に質問タイムを設け、社員の疑問や意見を収集し、その場で解決する姿勢を示しました。

イベント後には以下のようなポジティブな反応が寄せられました。
・「そんな使い方があるとは知らなかった」
・「もっと便利な方法を知ることができた」
・「業務スピードが上がった」
特に、ツールの機能を十分に理解できていなかった社員にとって、イベントが有意義であったことが明らかになりました。使い方の講座が直接業務効率化につながることを示すことで、ツールの価値を再認識してもらえました。

継続的なサポート体制の構築

  • 定期的なアンケートと改善:利用状況や社員の意見を定期的にアンケートや直接ヒアリングを通じて収集し、次回のアップデートに反映するサイクルを確立しました。

この取り組みにより、社員の安心感を高め、ツール活用の継続性を確保しました。また、社員の声を適宜反映することで、「社員とともに進化するツール」という信頼感を構築することができました。

まとめ

今回の記事では、社内AIチャットツール「DIVX GAI」の利用率向上に向けた取り組みについてご紹介しました。利用率の向上には、従業員一人ひとりの課題感を丁寧にヒアリングし、それに応じたデモイベントや定期的な機能開発を行うことが重要です。さらに、アンケート結果を基に継続的な改善を進めることで、利用者が「本当に便利だ」と感じられる環境を整えることができます。

ChatGPTと比較した際の大きな違いは、早期に利用者の声を拾い上げ、それをもとに必要な機能を模索しながら開発を進めた点にあります。出社日やミーティングの雑談からアイデアが閃くこともあり、実際にその結果としてChatGPTにはない「お気に入り機能」や「スレッド一括削除機能」といった日常業務で便利に感じる機能がリリースされました。また、RAGを使用した拡張機能や個別利用者設定の導入により、業務効率化や社内開発支援で大きな効果を発揮しています。これらの差別化された機能によって、ChatGPTに負けない利用率を維持しています。

AIツールは、正しく活用すれば業務効率に大きく貢献する力を持っています。今回の取り組みは、単なるコスト削減に留まらず、社内の業務に寄り添ったツールを構築することで、社員の働き方に実質的なメリットを提供するものとなりました。
この記事が、皆さんの取り組みに少しでも役立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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