アジャイル開発は要件定義が不要?よくある勘違いと正しい進め方を詳しく紹介
目次[非表示]
- 1.アジャイル開発に要件定義は不要なのか?
- 2.ウォーターフォール開発とアジャイル開発の決定的な違い
- 2.1.①ウォーターフォール開発の特徴
- 2.2.②アジャイル開発の特徴
- 3.アジャイル開発の要件定義でよくある勘違い
- 3.1.①要件を初期段階で固定すべきだという誤解
- 3.2.②ドキュメントや仕様書が不要だという誤解
- 3.3.③すべての要件を等しく扱うべきだという誤解
- 3.4.④スプリント初日にすべての要件を明確にすべきだという誤解
- 4.アジャイル開発で要件を明確にするユーザーストーリーとは
- 4.1.①ユーザーストーリーの基本フォーマット
- 4.2.②ユーザーストーリーの特徴
- 4.3.③ユーザーストーリーの使い方
- 4.4.④受け入れ基準(アクセプタンスクライテリア)
- 5.アジャイル開発の基本的な流れ
- 5.1.①プロジェクトの計画立案
- 5.2.②スプリント計画ミーティング(スプリント初日)
- 5.3.③デイリースクラム
- 5.4.④開発の実施
- 5.5.⑤スプリントレビュー
- 5.6.⑥スプリントの振り返り
- 5.7.⑦プロダクトバックログの更新と優先順位の再調整
- 5.8.⑧次のスプリントへ向けた計画立案
- 6.まとめ
- 7.お悩みご相談ください
システムの開発手法はいくつかあり、どの手法を選ぶかによって開発工程が異なります。
たとえば、アジャイル開発には「要件定義」というフェーズが存在しないため、ウォーターフォール開発の経験や知見だけで進めると、プロジェクトに支障をきたす可能性があります。
そのため、アジャイル開発の要件を明確化する方法や、ウォーターフォール開発とは異なる開発の流れを正しく理解しておくことが大切です。
この記事では、アジャイル開発における要件定義の必要性や、よくある勘違いと正しい進め方などを詳しく紹介します。
アジャイル開発に要件定義は不要なのか?
アジャイル開発は、計画、設計、実装、テストという開発工程を、機能単位の短いサイクル(通称:スプリント)で繰り返し、リリースする開発手法です。
アジャイル開発には、ウォーターフォール開発のような要件定義フェーズが存在しません。
初期段階で要件定義を決めてしまうのではなく、スプリントにおいてその都度、そのタイミングで最適な要件を検討、そして検証するのがアジャイル開発における要件の取り扱い方です。
ウォーターフォール開発とアジャイル開発の決定的な違い
ウォーターフォール開発とアジャイル開発を比較したとき、計画からリリースまでの流れでどのような違いがあるのか解説します。
①ウォーターフォール開発の特徴
ウォーターフォール開発は、要件定義、設計、実装、検証・保守などのフェーズを初期段階で明確に決定します。
プロジェクトの範囲や期間、予算などを明確にできるため、管理が比較的容易なのがウォーターフォール開発の特徴です。
ただし、最初に全体を計画・決定して順当に進める形式のため、それぞれのフェーズを遡って柔軟に変更することができません。
したがって、プロジェクトの進行中に仕様変更に対応しにくいというデメリットがあり、顧客のフィードバックを柔軟に取り入れるのが困難です。
②アジャイル開発の特徴
アジャイル開発では、ウォーターフォール開発のように初期段階で固定された「要件定義」というフェーズは設けません。
要件はプロジェクトの進行に合わせて柔軟に調整され、計画、設計、実装、テストという開発サイクルを小さな機能開発ごとに繰り返していきます。
ウォーターフォール開発とは異なり、プロジェクトの進行中でも仕様変更や顧客のフィードバックを柔軟に反映できるのが特徴です。
したがって、短期間における成果物のレビューを通じて、要求、要件、仕様漏れなどの認識のズレにいち早く気づくことができます。
アジャイル開発は、最終的な製品が顧客ニーズにより密接に合致する開発手法であると言えます。
ただし、エンジニアのリソース管理がウォーターフォール開発よりも難しいです。そのため、社内のリソースに応じて、外部のエンジニアを上手く活用しながら進めることを検討しなくてはなりません。
アジャイル開発の要件定義でよくある勘違い
アジャイル開発では、要件定義やドキュメント・仕様書の必要性について誤解が生まれることがあります。
具体的にどのようなシーンで誤解が起こりやすいか説明します。
①要件を初期段階で固定すべきだという誤解
アジャイル開発の根本的な考え方の一つとしてあるのが、変化に対応しやすいことです。
要件はプロジェクトが進行するにつれて変わっていくケースが多いです。
しかし、一部の人々はプロジェクトの開始段階ですべての要件を固定し、「その後の要件変更は極力避けるべき」だと誤解しています。
アジャイル開発では、むしろ変化を受け入れ、必要に応じて仕様変更に適応させていくことを推奨しています。
②ドキュメントや仕様書が不要だという誤解
アジャイル開発では、ドキュメント・仕様書の作成を重視しないという誤解が生まれがちです。
アジャイル開発には、「ドキュメントよりもコードを重視する」という原則がありますが、これはドキュメントが不要であるという意味ではありません。
必要なドキュメント・仕様書を適切なタイミング、適切な詳細度で作成することは、アジャイル開発の重要なポイントです。
③すべての要件を等しく扱うべきだという誤解
アジャイル開発では、要件に優先順位を付け、最も価値の高い機能から着手することが推奨されます。
「すべての要件が等しく重要である」という誤解が生じることがありますが、アジャイル開発における要件の優先順位付けでは、「プロジェクトの目標達成に不可欠な機能」と「あれば嬉しいがなくても支障のない機能」で区別することが重要です。
④スプリント初日にすべての要件を明確にすべきだという誤解
スプリント計画ミーティングでは、次のスプリントで取り組むべきタスクや機能を計画しますが、この時点で「すべての詳細を完璧に決める」というのは誤解です。
スプリントを通じて、要件をさらに詳しく理解し、必要に応じて機能の仕様変更に適応していく柔軟性がアジャイル開発にはあります。
アジャイル開発で要件を明確にするユーザーストーリーとは
ユーザーストーリーとは、アジャイル開発でよく使われる手法です。
ここでは、ユーザーストーリーの基本フォーマットや特徴、使い方などを解説します。
①ユーザーストーリーの基本フォーマット
ユーザーストーリーの基本フォーマットでは、誰が使用するのか(ユーザータイプ)、何を達成したいか(目標)、なぜそれが必要なのか(理由)を明確にします。
ユーザーストーリーにおけるユーザーとは、開発する機能・サービスの利用者のことです。
この構造により開発チームは、「開発する機能が特定のユーザーに提供すべき価値」を簡単に理解できます。
②ユーザーストーリーの特徴
ユーザーストーリーはそれぞれ短く作成し、特定の機能や要件に焦点を当てることが望ましいです。そして、実際のユーザーニーズや目標を基に文書を作成していきます。
ユーザーストーリーは文書自体よりも、それを基にしたユーザーとの話し合い・対話の価値を重視します。要件の理解にはコミュニケーションが不可欠なためです。
また、機能の詳細を最小限に抑えて記載し、開発チームが最適な実装方法を考える余地を残します。
③ユーザーストーリーの使い方
ユーザーストーリーを使用する際、プロダクトバックログの作成、優先順位付け、スプリント計画、そして実装・テストが必要になります。
プロジェクトの初期段階では、すべてのユーザーストーリーをリストアップし、プロダクトバックログを作成します。プロダクトバックログは、プロジェクトを通じて管理・更新されていきます。
ユーザーストーリーは、ビジネス価値や緊急性、技術的難易度などの基準に基づき、優先順位を付けることが望ましいです。
スプリント計画ミーティングでは、優先順位の高いユーザーストーリーから取り組むタスクを選定し、スプリントバックログに追加します。
ユーザーストーリーは、開発とテストの指針とされます。ユーザーストーリーが満たされているかを確認するために、受け入れ基準を用いたテストが必要です。
④受け入れ基準(アクセプタンスクライテリア)
受け入れ基準は「アクセプタンスクライテリア」とも呼ばれ、ユーザーストーリーが完了したとみなせる条件を明確化します。
受け入れ基準の設定は、ユーザーストーリーの品質を保証するために不可欠です。
ユーザーストーリーの効果的な使用は、開発チームと顧客間の明確なコミュニケーションを促し、期待に沿った高品質な製品の開発につながります。
アジャイル開発の基本的な流れ
ここからは、アジャイル開発で変化に柔軟に対応するアプローチを踏まえて、開発の基本的な流れを解説します。
①プロジェクトの計画立案
アジャイル開発の初期段階では、プロジェクトのビジョンや目標を定義します。
大まかなプロダクトバックログを作成し、それに基づいてプロジェクトの計画を立案します。
この時点で、すべての詳細を洗い出すわけではありません。把握できている範囲で要件や機能をリストアップします。
②スプリント計画ミーティング(スプリント初日)
スプリント計画ミーティングは、スプリント開始時に行われる会議であり、スプリントで取り組むタスクをプロダクトバックログから選定し、スプリントバックログを作成します。
開発チームは、スプリントの目標を明確にして「どのタスクをいつまでに終えるのか」を具体的に計画します。
③デイリースクラム
デイリースクラムとは、スプリント目標の達成に向けて行う、開発チームによるミーティングのことです。
スプリント期間中、毎日短時間のデイリースクラムを実施します。
デイリースクラムでは、チームメンバー間でプロジェクトの進行状況や今後の作業計画、問題点などを共有します。
④開発の実施
開発チームは、スプリントバックログに基づいてタスクを進め、スプリント目標の達成に向けて作業します。
アジャイル開発では、随時要件の変更・調整などに対応していきます。
⑤スプリントレビュー
スプリント終了時、そのスプリントで完成した製品の機能をステークホルダーへデモンストレーションします。
このデモンストレーションをスプリントレビューと呼びます。
スプリントレビューでは、成果物がプロジェクトの目標に合致するか評価し、顧客からフィードバックを受け取ります。
⑥スプリントの振り返り
スプリントレビュー後、開発チームは完了したスプリントの過程を振り返ります。
うまくいったこと、うまくいかなかったことや、どのようにプロセスを改善できるかを議論し、次のスプリントにおける改善策を特定します。
⑦プロダクトバックログの更新と優先順位の再調整
スプリントレビューやスプリントの振り返りで得られたフィードバックに基づき、プロダクトバックログを更新します。
ここでは、新しい要件や変更、開発する機能の優先順位の調整などを行い、プロジェクト全体の方向性を最適化します。
⑧次のスプリントへ向けた計画立案
更新されたプロダクトバックログに基づいて、次のスプリントの計画を立てます。
そのあと、再びスプリント計画ミーティングから開発、スプリントレビュー・振り返り、プロダクトバックログの更新という一連のプロセスを繰り返すのがアジャイル開発です。
このアプローチにより、アジャイル開発は変化に迅速に対応し、継続的に価値を提供するプロダクトを生み出すことができます。
まとめ
この記事では、アジャイル開発における要件定義について、以下の内容を詳しく解説しました。
- アジャイル開発における要件定義の必要性
- アジャイル開発の要件定義でよくある勘違い
- アジャイル開発で要件を明確にするユーザーストーリー
- アジャイル開発の基本的な流れ
アジャイル開発は、初期段階に要件を固定するウォーターフォール開発とは異なり、プロジェクト進行中でも仕様変更に適応できる柔軟性のある開発手法です。
アジャイル開発では、下記のような誤解が生まれやすいです。
「アジャイル開発でも全ての要件を最初に明確にすべき」 「ドキュメントや仕様書は不要」 「すべての要件を等しく扱うべき」
これらはすべて誤った認識であり、アジャイル開発で自社製品を開発する際は、正しい知識と理解、ノウハウなどが求められます。
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